美々しく、2020
みなさま、あけましておめでとうございます!
2020年もどうぞよろしくお願いします(__)
みなさまにとって良い一年であることを願っております。
この年末年始、少しお休みをいただき、その間に『井上靖集』
にある『淀どの日記』をようやく読み終えました。
大阪夏の陣で豊臣秀頼が出陣しようとするシーン(この物語では
結局出陣しなかったのですが)で印象に残った言葉があります。
・・・秀頼の武者振りの凛々しさに眼を奪われていた。自分は(淀どののこと)
いま秀吉在世の時代に生きているのではないかという気がした。それ程その場の
秀頼は凛々しく、美々しく見えた。
この中の「美々しく」という言葉がなぜか目にとまったのです。
↓↓↓この写真の真ん中辺りです。
ここを「美しく」とするのではなく「美」を重ねて「美々しく」と書くことで、
豊臣家滅亡直前で消えようとする灯を引き立てているように思えたのです。
勉強不足でこれの読みや意味に自信がなかったので、手持ちの辞書やネットで調べて
みました。調べたかぎり「美美しい」と書かれていて「びびしい」と読み、意味は
「はなやかで美しいさま」とのことです。
はなやかで美しいさま
秀頼のイメージ、偉大な父親秀吉と比較されるからか頼りないものだった
のですが、この場面を読んでいるとまさにはなやかで美しいさま、
「いさぎよさ」さえ感じるのです。
これを「凛々しく、美しく」と書かれていれば、ここまで心に刻まれたかどうか。
「美」をふたつ重ねることで、若武者の初々しさ、秀頼なりの覚悟、父秀吉とちがい
戦を経験することなく死んでいった秀頼の憐れみ、無常観、などなど鮮やかに想像させて
くれる気がします。
さらに「凛々しく、美々しく(りりしく、びびしく)」とすることで韻もふんで
さらに力強さも出てきているように思うのです。文豪井上靖の奥深さなのでしょうか。
東京書籍の『新編新しい国語3』に堀江敏幸著『二つのアザミ』という書き下ろしの
短い文章があります。自身の読書体験から得た考えを述べているのですが、最後は
このようにしめくくっています。
本を読み、言葉に触れ、言葉を育てていく喜びは、こんなふうに、見慣れていた光景に
新しい光が当てられる様子を、驚きをもって眺めることにあるのではないでしょうか。
たしかに「美々しく」という言葉に出会うことは驚きだったし、この言葉のことを
考えていると何かこれから起こることが楽しみなのです。
しかも2020年はじめのことだったので、いつも以上にこの1年が楽しみにもなって
きました。新しい本、新しい言葉との出会いもね。
明日4日から冬期講習を再開します。「美々しい」気持ちで子供達を迎えたいです。
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